国外関連者に対する寄附金
海外子会社等への利益移転に対処するための制度として「国外関連者に対する寄附金」と「移転価格税制」があります。移転価格課税と寄附金課税との線引きは曖昧で、明確に区分するのは難しいというのが現実です。
国外関連者に対する寄附金
国外関連者とは出資比率が50%以上の外国法人のことをいいます。海外子会社のことです。
法人が支出する寄附金のうち国外関連者に対する寄附金は全額損金とはなりません。
ここでいう寄附金とは税法上の寄附金で、直接事業に関係なく、対価を伴わず、無償で与えたものをいいます。
低額譲渡や高額買入が実質的に贈与または経済的利益を無償で与えたものだった場合も、寄附金課税の対象となります。
寄附金とみなされる可能性のある事例
海外子会社に対する役務の提供対価の未回収
海外子会社の経理業務を代行したり、宣伝活動を代行したなど役務の提供を行った場合は独立した第三者との間で取引が行われた場合と同様の対価を回収する必要があります。
ロイヤリティの未回収
親会社のノウハウを使って利益を上げているような場合にはロイヤリティの回収が必要です。
海外子会社への出向者に対する給与の負担
親会社からの出向者に対して、現地の給与水準と日本での給与水準との格差を親会社が負担することは認められています。ですが、算定根拠が不明瞭な場合や負担額が過大な場合には寄附金として課税される場合があります。
海外赴任規定などを作成しておくなど負担額が過大でないことを説明できるようにしておく必要があります。
金銭の貸付を行ったのに利息を計上していない、または少ない計上で経済的利益を与えている
親子間での貸付においても独立企業間で同条件の貸付が行われた場合の金利を適用することが必要です。
まとめ
寄附金は、税金の計算上全額経費とはなりません。
寄附金というつもりはなくても寄附金と認定されてしまえばその分税金を余分に支払うことになります。
海外取引の調査においても海外子会社との取引を重点的に調査されます。海外子会社へ業務委託費などの支払いがある場合には、業務委託費に仮装した資金援助ではないかという観点からも調査が行われます。
リスクに対応するためにはグループ間での取引内容や回収方法等の取引に関する社内資料を準備しておく必要があります。