中国駐在員の短期滞在者免税(183日ルール)について解説

中国駐在員の給与の課税方法

原則的な考え方

日中租税条約によると、一般的に給与に対する第一次課税権は、給与を支払った企業が居住する国ではなく、給与の対価となる役務提供をした国(勤務を行った国)にあります。
そのため、日本法人の社員が中国で勤務したことに対する報酬は、その報酬が日本法人から支払われた場合でも、中国で課税されることが原則になります。

短期滞在者免税(183日ルール)

しかし、中国での勤務日数が183日以下などの一定の条件を満たした場合は、中国での課税は免除される「短期滞在者免税」というルールが、日中租税条約に定められています。

短期滞在者免税の適用要件

短期滞在者免税は以下の3つの要件を満たす場合に適用されます。
① 中国での滞在期間が1課税期間(1/1~12/31)を通じて、合計183日以内であること
② 駐在員に支払われる報酬が、中国の居住者から支払われていないこと
(つまり、報酬がすべて日本法人から支払われていればOK)
③ 駐在員に支払われる報酬が、日本法人が中国内に保有するPE(恒久的施設)によって負担されていないこと
(つまり、報酬がすべて日本法人から支払われていればOK)

しかし、この要件には例外があり、次の「短期滞在者免税が適用されないケース」に該当する場合は、短期滞在者免税が適用されないこととなります。

短期滞在者免税が適用されないケース

駐在員が中国で高級管理職の肩書きを持っている場合

駐在員が中国で高級管理職の肩書きを持っている場合には短期滞在者免税が適用されません。
高級管理職とは、総経理、副総経理、各職務長などの会社の管理職と指します。

駐在員が中国でPE認定されている業務を行っている場合

駐在員が中国でPE認定されている業務を行っている場合には、短期滞在者免税は適用されません。
これは、PE(恒久的施設)で業務を行っているということは、駐在員の経費はそのPEが負担していると考えられることとなります。
こうなると、短期滞在者免税の適用要件③「駐在員に支払われる報酬が、日本法人が中国内に保有するPE(恒久的施設)によって負担されていないこと」を満たさないと解釈されることから、短期滞在者免税が適用できないこととなります。

PE課税とは?

PE(恒久的施設)とは

通常は各国の課税権が及ぶ範囲は、その国に居住する人や企業のみになります。
ただ、外国人や外国法人であっても、その国で事業を行っている場合には課税をする必要があります。
その際に、自国で事業を行っている外国人や外国法人のPE(恒久的施設)が自国にあるとされた場合には、そのPEに対して課税することになります。
中国でPEに該当する施設や業務かどうかを検討する際には、「中国国内税法」「日中租税条約」「中国国家税務総局が発表する通達」を確認する必要があります。
それぞれの詳細な内容に関しては今回は割愛します。

まとめ

役員や社員が中国で仕事を行う場合には、法人としても個人としても中国で課税される可能性があるため注意が必要になります。

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