日払いの給与と源泉所得税の注意点

日払いの給与と源泉所得税

所得税の源泉徴収とは

所得税とは、収入から所得控除を除いた金額に対して一定の税率で課される税金です。
所得税は本来従業員が税務署に払うべきものですが、会社が給料から差し引く形で徴収を代わりに行います。これを「源泉徴収」と呼びます。

源泉所得税の計算方法

給与から源泉徴収を行う場合には、毎年国税庁から公表される「給与所得の源泉徴収税額表」を用います。源泉徴収税額表には、3種類あり、給与支給が月払いで行われる場合に用いられる「月額表」と日払いや週払いに対応した「日額表」、賞与を対象とした「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」があります。

源泉徴収税額表には、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」提出者が適用される甲欄と、提出のない者が適用される乙欄、および日雇い等の方に適用される丙欄(日額表のみ)があります。

月払い給与の場合

給与支給が月払いの場合、甲欄と乙欄では税率が大きく異なります。これは甲欄の税額表には「給与所得控除」が加味されているためです。一方、乙欄の税額表は「給与所得控除」の適用が前提とされていません。
この為、給与額の多い(=主として従事している)就労先で甲欄の適用を受けることが一般的です。副業等で他の就労先がある場合、そちらでは乙欄が適用されます。(注:扶養控除等(異動)申告書は、同時期に2箇所には提出できません)

日払い・週払い給与の場合

一方、日払いの場合は甲欄・乙欄に加えて丙欄という区分があります。
丙欄は「2ヵ月以内の雇用契約期間」である場合に限り適用される計算方法です。
(甲欄・乙欄に比べて、事業主が徴収する税額が少なく設定されています)
雇用契約書等に、雇用関係が2ヵ月以内であることが明示されていれば適用されますが、
特に期間の定めがない場合は、適用することができません。

手取り額保証の注意点

日払いで従業員を雇用する際、「1日あたり10,000円を手取りで渡します」と雇用条件にうたってしまった場合、その方が乙欄に該当すると事業主が支払う給与額は想定よりかなり高くなります。
例:乙欄適用者に対する10,000円の手取り計算
給与額12,370円-源泉所得税2,370円=手取り額10,000円

週末の忙しい時期にだけ・・と年間100日程度を上記計算で雇用すると、「手取り額」であるかないかだけで、237,000円も支払額総額に差が出てしまうことになります。安易な雇用契約は後々負担となるので注意しましょう。

まとめ

税務調査にて、源泉徴収税額の確認が行われることが多くあります。法定納期限から5年間で時効となりますが、毎月納付の法人であれば、60回分が税務調査の対象となります。
源泉徴収税不足があれば、事業主がその源泉徴収税不足相当を税務署に納付して、かつ延滞税と不納付加算税(税務調査時であれば、納付額の10%)を負担することになります。ちなみに、延滞税と不納付加算税は法人税算出上、損金となりません。
そして、支払った源泉税については、支払った個人から回収することになるのですが、現実的には難しいケースが多いです。そうなると、源泉税分が事業主の負担となります。
利益をあげていくためには、人件費の管理は必要不可欠です。適正な計算方法を理解し、正しく徴収を行いましょう。

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