個人事業主 現金主義による所得計算の特例
個人事業主が事業所得や不動産所得の確定申告を行う際に、特例を利用することで現金主義による所得計算を行うことができます。
今回は、「個人事業主の現金主義による所得計算の特例」について解説します。
個人事業主の所得計算方法
原則
個人事業主の事業所得・不動産所得は発生主義により所得計算を行うことが原則となります。
発生主義とは、取引発生時点で売上・経費を計上する方法です。
例えば、12月に役務提供を完了した場合、請求日や入金日が1月であっても、12月分として売上計上を行います。
特例
個人事業主は、税務署への届出を行うことで、事業所得・不動産所得の所得計算を発生主義ではなく、現金主義により行うことが可能となります。
現金主義とは、売上の入金あったタイミング・経費の支出があったタイミングで売上・経費を計上する方法です。
例えば、12月に行った役務提供の入金が1月にあった場合、1月分として売上計上を行います。
現金主義による所得計算の特例を受けるための手続
届出書の提出
現金主義により所得計算の特例を受けるためには、「現金主義による所得計算の特例を受けることの届出書」を税務署に提出する必要があります。
提出期限
この届出書の提出期限は、適用を受けようとする年の3月15日までとなります。
その年の1月16日以後に新たに開業した場合には、開業した日から2月以内となります。
【要件①】青色申告者であること
現金主義により所得計算の特例を受けるためには、青色申告者であることが要件となります。
「所得税の青色申告承認申請書」の提出を行い、複式簿記による記帳と、その記帳に基づいた正しい申告を行う事業者をいいます。
【要件②】小規模事業者であること
現金主義により所得計算の特例を受けるためには、小規模事業者であることが要件となります。
小規模事業者とは、その年の前々年分の事業所得の金額及び不動産所得の金額(青色事業専従者給与の額を必要経費に算入しないで計算した額)の合計額が300万円以下である事業者をいいます。
デメリット
現金主義により所得計算の特例を受けた場合のデメリットは、青色申告特別控除の額が最大10万円になることです。
発生主義により一定の要件を満たす申告を行う場合の青色申告特別控除の額は最大65万円です。
現金主義を採用することで、一定の要件を満たさなくなるため、青色申告特別控除の額が最大10万円となってしまいます。
まとめ
個人事業主が確定申告を行う場合に、現金主義により所得計算の特例を受けることで帳簿作成などが簡単になり、確定申告業務を省力化できることが考えられます。
ただ、特例を受けることによるデメリットも存在するため、十分に検討して特例を利用することが必要となります。