100%子会社から受け取る配当金に関する税務
100%子会社(完全子法人)から受け取る配当金の「益金不算入」「源泉徴収義務」について解説します。
受取配当金の益金不算入
完全子法人株式等の配当は益金不算入
受取配当金の益金不算入の規定により、完全子法人株式等からの配当金は、全額益金不算入となります。
つまり、配当金を受け取った法人では、この配当金に対して法人税は課税されないこととなります。
完全公法人株式等とは?
ここで言う完全子法人株式等とは、配当等の額の計算期間の初日から計算期間の末日まで継続して法人とその支払を受ける配当等の額を支払う他の内国法人との間に完全支配関係があった場合の当該他の内国法人の株式又は出資となります。
例えば、期の途中で子会社株式の全株取得を行った場合には、配当計算期間のすべての期間継続して完全支配関係にはないため、完全子法人株式等には該当しないこととなります。
配当金の源泉徴収
源泉徴収の基本ルール
法人が配当金を支払う場合、その配当金からあらかじめ決められた税率により所得税等を源泉徴収する必要があります。
税率は以下の通りとなります。
■上場株式の配当金:15.315%
■非上場株式の配当金:20.42%
源泉徴収を行った所得税等は、原則として支払月の翌月10日までに税務署に納付を行います。
完全子法人株式配当の源泉徴収の問題点
完全子法人からの配当金に関しても、源泉徴収義務があります。
ただ、完全子法人からの配当金は益金不算入となるにも関わらず、これらの配当等について源泉徴収を行った場合、納税者は配当等に係る源泉徴収により一時的な資金負担と事務負担が生じ、税務署側でも還付金及び還付加算金を支払うことによる還付事務が生じることとなります。
この流れが源泉徴収の制度趣旨に沿っていないと考えられていました。
そこで、令和4年税制改正大綱において「完全子法人株式等の配当に係る源泉徴収制度の見直し」を行うことが示されました。
令和4年度税制改正大綱
完全子法人株式等の配当に係る源泉徴収制度の見直し
一定の内国法人が支払を受ける配当等で次に掲げるものについては、配当等に係る所得税の源泉徴収を行わないこととする。
①完全子法人株式等(株式等保有割合100%)に該当する株式等に係る配当等
②配当等の支払に係る基準日において、当該内国法人が直接に保有する他の内国法人の株式等(当該内国法人が名義人として保有するものに限る)の発行済株式等の総数等に占める割合が3分の1超である場合における当該他の内国法人の株式等に係る配当等
適用時期
令和5年10月1日以後に支払を受けるべき配当等について適用
注意点
この税制改正大綱によると、100%子会社や関係会社(3分の1超の株式を保有)からの配当金の源泉徴収は不要となります。
今後の注意点としては、この税制改正大綱の対象法人と、受取配当金の益金不算入に規定されている「完全子法人株式等」「関連法人株式等」が必ずしも一致しない可能性があることが挙げられます。
まとめ
今回ご紹介した「完全子法人株式等の配当に係る源泉徴収制度の見直し」に関しては、この改正による税収減少の影響を緩和するために、令和5年度税制改正で見直しが行わる可能性が示唆されています。
そのため、今後もこの源泉徴収に関する取り扱いの動向を継続して確認していく必要があります。