遺言書とは?遺言書の種類・作成手順を解説

遺言書とは

自分の財産を自分の死後に財産をどう分けるのかを指定し、その指定に法的 効力を持たせるものです。法律の定めと異なる相続の配分を生前に希望するときに作成されます。(遺言書がない場合は民法の定めに従い、法定相続分で分配されます。)

 

遺言の方法

遺言には下記の方法があります。

普通方式:公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言

特別方式:一般危篤時遺言、難船危急時遺言、一般隔絶地遺言、船舶隔絶地遺言

このうち、公正証書遺言、自筆証書遺言が一般的です。今回はこの2つを解説します。

 

公正証書遺言

公正役場で証人2人以上の立会いの下、遺言者が遺言の趣旨を公証人に述べて、公証人の筆記により作成してもらう遺言書です。遺言書の原本は、公証役場で保管。専門家が作成するため有効性が高くなります。

 

【手順】

・公証人への遺言の相談や遺言書作成の依頼

・相続内容のメモや必要資料の提出

・遺言公正証書(案)の作成と修正(公証人)

・遺言公正証書の作成日時の確定

・当日の手続

証人2人以上の立会いの元、遺言者が遺言の趣旨を公証人に伝える

公証人が確定した公正証書に基づき遺言者と証人の承認を得る

遺言者・証人が署名押印、公証人も署名・職印押印

 

【公正証書遺言作成に必要な資料】

・遺言者本人の3か月以内に発行された印鑑登録証明書

(印鑑証明書の代用として、運転免許証、旅券、マイナンバーカードもOK)

・遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本や除籍謄本

(相続人以外に遺贈する場合は、その人の住民票、手紙、ハガキその他住所の記載のあるもの)

・不動産がある場合:記事項証明書(登記簿謄本)

固定資産評価証明書または固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書

・預貯金がある場合:預貯金通帳等またはその通帳のコピー

※遺言者で証人を用意する場合には、証人予定者の氏名、住所、生年月日および職業のメモ

 

【手数料】

公証人手数料令で定められている財産価格に対応します。相談は全て無料です。

※留意点

・相続、遺贈を受ける人ごとにその財産の価格を算出して合算します

・財産が1億以下の時は手数料に11,000円が加算

・原本、正本、謄本を各1部作成。原本は公証役場で保管、正本および謄本は、遺言者に交付されるための手数料が必要。1枚250円(3枚を超える場合)

・作成が病床で行われた時は手数料50%加算。その他役場以外で作成する場合は、公証人の日当+交通費が必要

 

【その他】

・保存期間 遺言者の死亡後50年、証書作成後140年または遺言者の生後170年間

 

自筆証書遺言

自分(遺言者)が、遺言の全文、日付、氏名を自分で手書きして、押印(認印も可)をする遺言書です。民法で定められた自筆証書遺言書の要件を満たすように記載します。記載要件があるため、無効になることが多々あります。

 

【手順】

・財産目録を作成

・遺言書に相続財産、相続人、日付、署名を明記して押印(印鑑は実印がベター)

・封筒に入れ、封をして割印を押す(封筒に入れることがベター)

・(相続発生後)家庭裁判所で自筆証書遺言書の検認を受ける※検認については別途

 

【自筆証書遺言の民法上の要件】

・遺言書の全文、遺言の作成日付及び遺言者氏名を、必ず遺言者が自書し、押印すること

・財産目録はパソコン作成可、不動産(土地・建物)の登記事項証明書や通帳のコピー等の資料を添付する方法で作成できるが、その目録の全てのページに署名押印すること

・訂正、内容追加は、その場所が分かるように示した上で、訂正又は追加した旨を付記して署名し、訂正又は追加した箇所に押印すること

 

※2020年~自筆証書遺言を法務省で保管する「自筆証書遺言書保管制度」スタートしており、遺言者本人が封をしていない遺言書を法務省に持っていき保管の申請を行うことができます。(遺言書の紛失や改ざんを防げ、家庭裁判所の検認不要)上記の要件の他、用紙サイズ、余白指定などの書式ルールがあります。

 

【手数料】

自分で作成の場合は不要。保管制度利用の場合は1件3,900円。

 

遺言書の有効性、相続発生時の取り扱い

自筆証書遺言:

遺言者の保管者または発見した相続人が、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に発見後速やかに検認を行います。勝手に開封した場合は無効にはなりませんが、検認していない場合は5万円以下の過料の可能性があります。無効の場合は改めて遺産分割協議が必要です。

公正証書遺言:検認不要

またいずれの場合も下記の内容は遺言書は無効になります。

内容が不明瞭/遺言能力がない人が作成/公序良俗に違反/詐欺・脅迫により遺言作成/新しい遺言があり内容が矛盾している(基本的には最新の遺言書が有効、前の遺言書は無効)

 

遺産分割協議との関係性

民法では遺言書より遺産分割協議が優先されています(民法第907条)

・遺言書に「特定の遺産を特定の相続人に相続させる」とある場合は遺言書優先の内容が優先されます(H3年最高裁)

・遺産分割協議で話し合えば遺言書どおりに相続しないことも可能だが、そのためには下記が必要です。

遺産分割協議が遺言で禁止されていない/相続人・受遺者の全員の合意がある/遺言執行者の同意がある

・納得できない場合は家庭裁判所に遺言無効確認請求訴訟・遺留分侵害請求等を行うことになります。

 

検認

検認とは家庭裁判所と相続人が遺言書の存在とその内容を認識し、検認以降の遺言書の改ざん等を防止するための手続です。検認されたから有効になるわけではなく、遺言書が複数ある場合は全ての遺言書の検認が必要です。

【手順】

・戸籍謄本を取得(3か月以内に発行のもの)

被相続人(出生時から死亡時までのすべての戸籍)/相続人全員

・東京家庭裁判所で検認の申立手続きを行う(※1参照)

・家庭裁判所から検認を行う日の通知が届く

・指定された期日に家庭裁判所に出頭して遺言書の検認を受ける(※2参照)

 

※1 検認の申立て手続きについて

家庭裁判所に持参するか、郵送での受付も可能です。

【送付書類】

■申立書

・遺言書を保管している人ごとに申立てを行う

・遺言書の預かり時期が不明な場合はおおよその日付を記入

・遺言書が複数ある場合は2段書きでそれぞれの日付を記入

特記事項欄にも遺言書が複数ある旨を記載する

・相続人欄の自署は不要(申立人等が記入可)

■戸籍謄本(被相続人・相続人全員)

■収入印紙 遺言書一通につき800円

■連絡用の郵便切手

84円×(申立人+(相続人数×2))枚,10円×(申立人+相続人数)枚

「申立人兼相続人」は申立人に含む

 

※2 検認手続きについて

・検認を受ける遺言書、印鑑、その他指定物を持参

・「検認済証明書」の発行を申請

※申請には遺言書1通につき150円の収入印紙と申立人の印鑑が必要

 

まとめ

公正証書遺言については公証人が作成するため無効となる心配はありませんが、自筆証書遺言の場合は書き方の不備により無効になることも多いので注意しましょう。将来の相続トラブルが生じないよう、相続人が困らないように用意することが大切です。