居住用賃貸建物を取得した際の消費税の取り扱い

事業者が賃貸物件を取得した場合、その建物部分に関して、消費税の仕入税額控除を受けることができるか否かは重要なポイントとなります。
今回は、事業者が住宅の貸付けの用に供する不動産を取得した場合の仕入税額控除について解説します。

目次

居住用賃貸建物の取得に係る仕入税額控除の制限

概要

事業者が国内において行う居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額については、仕入税額控除の対象となりません。

適用開始時期

令和2年10月1日以後に行われる居住用賃貸建物の課税仕入等の税額について適用されます。

用語の説明

「居住用賃貸建物」とは

居住用賃貸建物とは、住宅の貸付けの用に供さないことが明らかな建物以外の建物であって、高額特定資産または調整対象自己建設高額資産に該当するもの
をいいます。

「高額特定資産」とは

高額特定資産とは、一の取引単位につき、課税仕入等に係る支払対価の額(税抜き)が、1,000万円以上の棚卸資産または調整対象固定資産をいいます。

「調整対象自己建設高額資産」とは

調整対象自己建設高額資産とは、他の者との契約に基づき。または事業者の棚卸資産として自ら建設等をした棚卸資産で、その建設等に要した課税仕入れにかかる支払対価の額(税抜き)の累計が1,000万円以上となったものをいいます。

「調整対象固定資産」とは

調整対象固定資産とは、建物、構築物、機械及び装置、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で、一の取引の単位に係る対価の額(税抜き)が100万円以上のものをいいます。棚卸資産は対象資産に含まれません。

「住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物」とは?

基本的な考え方

住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物とは、建物の構造や設備等から判断して、住宅の貸付けの用に供しないことが客観的に明らかなものをいいます。

店舗住宅併用の場合

建物の一部が店舗用になっている居住用賃貸建物については、その構造や設備等の状況により住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな部分とそれ以外の部分とに合理的に区分しているときは、その居住用賃貸部分以外の部分に関しては、仕入税額控除の対象となります。

自社で利用する社宅を取得した場合

社宅を有償で貸し付ける場合

使用料を徴収する社宅は、居住用賃貸建物に該当します。
そのため、社宅の取得に係る課税仕入等の税額については、仕入税額控除の対象となりません。

社宅を無料で貸し付ける場合

使用料を徴収せずに無償で貸し付けることが、建物の取得時点で客観的に明らかな社宅については、居住用賃貸建物には該当しません。
この場合は、社宅の取得に係る課税仕入等の税額については、仕入税額控除の対象となります。
※社宅を無償で貸し付ける場合は、現物給与となり給与課税の問題が生じるため注意が必要です。

まとめ

令和2年10月1日以降、居住用賃貸建物の取得に関しては、仕入税額控除を受けることができなくなりました。
これにより、過去に一部で利用されていた金の売買を使った消費税還付スキームなども利用できなくなりました。
不動産購入時の資金計画などを作成する際にも注意が必要となります。

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