固定資産税の経費計上について
概要
所得税・法人税の確定申告において、所得の計算上、固定資産税を経費算入する場合の、その計上金額及び計上時期並びに計上の可否について考えたいと思います。
固定資産税とは
◆固定資産税とは
固定資産税は、毎年1月1日(賦課期日)現在に、土地・家屋・償却資産を所有している者が、その資産の価格をもとに算定された税額をその固定資産の所在する市町村に納める税金(地方税)です。
◆固定資産の納税義務者
固定資産税の納税義務者は、1月1日現在に資産を所有する者になります。具体的には、土地・家屋については、固定資産課税台帳に所有者として登録されている者になります。
年の途中で売買等があり、所有者が変更になったとしても、1月1日現在の所有者として登録されている者が、その年度の固定資産税を納付することになります。
◆納税
固定資産税の納税方法は、市町村から送付される納税通知書によって納めることになりますが、別途届出をすれば、口座振替による納税を選択することもできます。
納期は、原則として4月(Ⅰ期)・7月(Ⅱ期)・12月(Ⅲ期)・2月(Ⅳ期)の年4回となります。
※東京都は、6月・9月・12月・2月になります。
※固定資産税はⅠ期分の納期限までに一括で納税(全納)することも可能です。
法人税の場合
◆法人(法人税)の場合の固定資産税の損金算入時期
【法人税基本通達9-5-1】では、損金算入の時期について、
「賦課課税方式による租税の損金算入の時期は、賦課決定のあった日の属する事業年度とする。
ただし、法人がその納付すべき税額について、その納期の開始の日(納期が分割して定められているものについては、それぞれの納期の開始の日とする)の属する事業年度又は実際に納付した日の属する事業年度において損金経理をした場合には、事当該事業年度とする。」
とされています。
解りやすく言うと、次の3つの中から選択することができることになります
① 賦課決定のあった日(納税通知書が交付された)
② 分割された納期のそれぞれの納付開始日
③ 実際に納付した日
≪例≫
6月決算法人の場合
※2019年度の東京都の納期等
第Ⅰ期 2019/06/01~2019/07/01(納期限2019/07/01)
第Ⅱ期 2019/09/01~2019/09/30(納期限2019/09/30)
第Ⅲ期 2019/12/01~2019/12/27(納期限2019/12/27)
第Ⅳ期 2020/02/01~2020/03/02(納期限2020/03/02)
注)2019年度の東京都の納税通知書は2019/06/03に発送されます。
下記のいずれかを選択することになります
A 実際の納付の有無に関係なく、全期分損金算入
*06/03は06/30(期末)以前
B 実際の納付の有無に関係なく、第Ⅰ期のみ損金算入
*06/01は06/30(期末)以前
C 実際に納付が完了した金額を損金算入
所得税の場合
◆個人(所得税)の場合の固定資産税の必要経費算入時期
【所得税基本通達37-6】では、
「その年分の必要経費に算入する税金は、原則として、その年12月31日までに申告等により納付すべきことが具体的に確定したものとされています。
ただし、賦課課税方式の税金のうち固定資産税のように納期が分割して定められているものについては、それぞれの納期の開始日又は実際に納付した日の属する年分の必要経費にすることもできます。
解りやすく言うと、次の3つの中から選択することができることになります。
① 納付額の確定日(納税通知書が交付された)
② 分割された納期のそれぞれの納付開始日
③ 実際に納付した日
≪例≫
※2019年度の東京都の納期等
第Ⅰ期 2019/06/01~2019/07/01(納期限2019/07/01)
第Ⅱ期 2019/09/01~2019/09/30(納期限2019/09/30)
第Ⅲ期 2019/12/01~2019/12/27(納期限2019/12/27)
第Ⅳ期 2020/02/01~2020/03/02(納期限2020/03/02).
注)2019年度の東京都の納税通知書は2019/06/03に発送されます。
下記のいずれかを選択することになります
A 実際の納付の有無に関係なく、全期分損金算入
*06/03は12/31(年末)以前
B 実際の納付の有無に関係なく、第Ⅲ期まで損金算入
*12/01は12/31(年末)以前
C 実際に納付が完了した金額を損金算入
◆相続があった場合の固定資産税の必要経費算入
① 被相続人の確定申告(準確定申告)
1月1日から被相続人が亡くなった日までの所得税を申告する準確定申告において、亡くなった時までに納税通知書が届いていた場合には、
a.全額を必要経費とする
b.納期の納付開始日が到来した金額を必要経費とする
c.実際に納付が完了している金額を必要経費とする
の中から選択することができます。
しかし、亡くなった時までに通知書が届いていなかった場合には、必要経費に算入することはできません。
② 相続人の確定申告
被相続人が亡くなった日からの、相続人の確定申告において、納税通知書が届いていた場合には、被相続人の準確定申告で必要経費に算入されていない金額で、各種所得の業務に関する部分は算入できます。
◆不動産を使用貸借して収益を得た場合の固定資産税
実務上よくあるケースで、親(親族)の所有する土地の上に無償(使用貸借)で子供が賃貸不動産を建てて家賃収益を得ている場合があります。
この場合でも、土地の固定資産税の納税義務者は、あくまでも土地の所有者である親(親族)となり、固定資産税は親が支払うことになります。
この場合、家賃収入は子供が所有している建物から発生しているため、家賃収入は子供の不動産収入となり、建物の所有者(納税義務者)である子供が支払った建物の固定資産税は問題なく、不動産所得の必要経費に算入することができます。
では、土地の所有者(納税義務者)である親が支払った土地の固定資産税はどうなるのでしょうか?
答えは下記の【所得税基本通達56-1】により、次の2パターンのうち、どちらかになります。
① 親と子供が生計を別にしている場合
親の支払う土地の固定資産税は、必要経費に算入することができません。
② 親と子供が生計を一にしている場合
親の支払う土地の固定資産税は、必要経費に算入することができます。
【所得税法基本通達56-1】(親族の資産を無償で事業の用に供している場合)
不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を営む居住者と生計を一にする配偶者その他の親族がその有する資産を無償で当該事業の用に供している場合には、その対価の授受があったものとしたならば法第56条の規定により当該居住者の営む当該事業に係る所得の金額の計算上必要経費に算入されることとなる金額を当該居住者の営む当該事業に係る所得の金額の計算上必要経費に算入するものとする。
【所得税法第56条】(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)
居住者と生計を一にする配偶者その他の親族がその居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合には、その対価に相当する金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入しないものとし、かつ、その親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。この場合において、その親族が支払を受けた対価の額及びその親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、当該各種所得の金額の計算上ないものとみなす。
まとめ
上記のとおり、所得税や法人税の必要経費算入可否や必要経費算入時期等については、大変複数となっているので、十分な検討が必要になります。