創業融資のポイント 基礎から徹底解説(金融機関の選び方から事業計画書のポイントまで)

創業融資の選び方から、事業計画書のポイントまで、創業融資を受けるためのポイントを基礎から徹底解説します。
今回は、起業時に利用できる2つの創業融資である
「日本政策金融公庫の創業融資」
「地方自治体のあっせん創業融資」
についてご紹介します。

日本政策金融公庫の創業融資

日本政策金融公庫とは、政府が100%出資する政府系金融機関です。
日本政策金融公庫は、起業したばかりで民間の金融機関との取引がないような会社に対しても、創業融資を行っています。
日本政策金融公庫の創業融資は主に2種類です。

中小企業経営力強化資金

融資限度額:2,000万円
利率:年2.11%
自己資金要件:なし
その他要件:認定経営革新等支援機関の支援を受けていること

経営力強化資金の特徴


融資限度額は2,000万円と高額です。
創業融資で2,000万円の融資が可能な制度は他にありません。
また、自己資金要件がないため、自己資金が少ない方でも高額の融資を受けることが可能です。

その他条件として「認定支援機関の支援を受けていること」というものがあります。
認定支援機関とは、正式な名称を経営革新等支援機関と言い、「中小企業の経営相談等のための、専門知識や、実務経験が一定レベル以上あると国が認定する公的な支援機関」のことです。
主には税理士などが認定支援機関となっています。
税理士などの認定支援機関から、事業計画書作成やその後の支援を受けることを条件として、この経営強化資金を利用することができます。

経営力強化資金は、融資後受けた後、毎年の進捗報告書の提出が必要となります。
会社の決算が終わったタイミングで、認定支援機関から日本政策金融公庫へ1年間の業績の報告書を提出することになります。

新創業融資

融資限度額:1,000万円
利率:年2.26%
自己資金要件:融資希望額の10の1以上の自己資金

新創業融資の特徴

新創業融資は、一般的な創業融資制度になります。
認定支援機関の支援を受ける条件はないため、認定支援機関に依頼をしなくても利用が可能です。
融資の条件は、融資限度額・自己資金要件・利率どれをとっても、経営力強化資金よりも劣ります。

しかし、会社の代表者が、「若者(35歳未満)」「女性」「シニア(55歳以上)」のいずれかに該当する場合は、利率1.86%に下がります。
これらに該当すれば、経営力強化資金よりも低金利となります。

日本政策金融公庫 創業融資の注意点

創業融資は保証人なしでOK?

金融機関から法人が融資を受ける場合には、代表者が保証人となるケースが一般的です。
保証人とは人的担保と言われ、債務者(法人)が返済をできなくなった場合には、保証人がその債務を肩代わりすることになります。

しかし、日本政策金融公庫の創業融資は保証人なしで融資を受けることができます。これは代表者にとっては大きなメリットとなります。
ちなみに、代表者を保証人とすることも可能で、その場合には借入利率が0.1%低減されることになります。

ネットバンクはNG

日本政策金融公庫は融資を行うための金融機関であるため、民間の銀行のように預金通帳などはありません。
そのため、創業融資を受けるためには、他の民間の銀行の預金通帳を持っていることが条件になります。
その際の銀行は、ネットバンクは認められていません。
事前にネットバンク以外の銀行の預金通帳を作成しておく必要があります。

シェアオフィスなどは要注意

起業当初は、シェアオフィスやバーチャルオフィスを本店として利用するケースがあります。
銀行で預金通帳を作成する場合に、シェアオフィスやバーチャルオフィスだと作成できない可能性があります。
預金通帳を作ることができなれば、創業融資を受けることもできないため、本店をどこに置くかは慎重に検討しなければなりません。
銀行によって条件は異なるため注意が必要ですが、シェアオフィスであっても会社として固定席がある契約の場合は、預金通帳の作成ができることが多いようです。

日本政策金融公庫 必要書類・申し込みの流れ

必要書類

創業融資の申し込みの必要書類は以下と通りです。
利用する制度によって少し異なるため注意してください。

<中小企業経営力強化資金>
・借入金申込書
・創業計画書
・事業計画書
・見積書
・物件概要
・自己資金を証明する資料
 ※中小企業経営力強化資金を受ける場合は、「事業計画書」が必須になります。
  この事業計画書には、認定支援機関の印鑑も必要です。

<新創業融資>
・借入金申込書
・創業計画書
・見積書
・物件概要
・自己資金を証明する資料

申し込みの流れ

創業融資を申し込む際の流れは以下のようになります。
① 創業計画書の作成、提出
② 面談日時の決定
③ 面談
④ 審査
⑤ 融資決定
⑥入金
この一連の流れで、早ければ1ヵ月程度で融資額の入金まで完了することが可能です。
日本政策金融公庫は比較的短期間で融資を受けることができます。

地方自治体のあっせん創業融資

地方自治体のあっせん創業融資とは、一般的な融資と同じように、民間の金融機関から創業融資を受ける制度です。
その際に地方自治体が間に入ることで、金利などの補助を受けることができる仕組みになっています。

一般的な銀行融資の仕組み

まずは、一般的な銀行融資の仕組みについてご説明します。
銀行が融資を行う際、過去の融資実績が少ない会社の場合は、信用保証協会をいう機関の保証をつけることが条件となります。
信用保証協会とは、会社が借入金の返済ができなくなった時に、会社に代わって借入金の返済を行う機関です。
銀行にとっては、信用保証協会の保証がついていれば、会社の業績が悪くなっても信用保証協会から返済してもらえるため安心です。
会社は信用保証協会に保証料の支払いをすることで保証をつけることができます。

信用保証協会の保証なしで銀行から受ける融資をプロパー融資と言います。
融資実績がある会社であれば、プロパー融資を受けることが可能になります。

一般的に起業時にプロパー融資を受けることは難しいため、創業融資は信用保証協会の保証を付けて融資を受けることになります。

地方自治体のあっせん創業融資とは?

創業融資を受ける際には、過去の融資実績はないため、信用保証協会の保証をつけて融資を受けることになります。
その場合は、銀行の利息と信用保証協会への保証料をダブルで支払うことになります。
そこで、その負担を軽減するために地方自治体が間に入ることで、その利息・保証料を補助してくれる制度が、「地方自治体のあっせん創業融資」です。
銀行の利息・信用保証協会の保証料を地方自治体に援助してもらいつつ、融資を受けることができるため、実質的は利息・保証料の負担はかなり少なくなります。

地方自治体のあっせん融資制度の条件

地方自治体のあっせん融資制度の条件は、自治体によって異なります。
各自治体の創業融資制度の条件は、地方自治体のホームページから確認することができます。
目黒区と渋谷区の創業融資制度の条件は以下のようになります。

<目黒区の創業融資>
融資限度額:1,000万円
利率:年1.8%(利用者負担:0.3%、区負担:1.4%)
保証料:全額を区が負担(利用者負担なし)
自己資金要件:融資額と同額の自己資金

<渋谷区の創業融資>
融資限度額:1,500万円
利率:年1.7%(利用者負担:0.4%、区負担:1.3%)
保証料:自宅も渋谷区または一定の業種に該当の場合のみ30万円まで区が負担
自己資金要件:融資額と同額の自己資金

地方自治体のあっせん創業融資の注意点

保証料の負担は要チェック!

地方自治体のあっせん創業融資は低金利で融資を受けることができます。
しかし、利率が低くても、信用保証料を金額によって、実質的な負担は大きくなってしまいます。
地方自治体のあっせん創業融資では、信用保証料の補助もあるケースもあるため、利息の補助だけでなく、信用保証料の補助の条件もしっかり確認しましょう。

代表者の連帯保証が必要?

創業融資で信用保証協会の保証を受ける場合には、会社の代表者が信用保証協会に対して連帯保証人となる必要がある可能性があります。
代表者の連帯保証が必要かどうかは、創業融資審査時の審査によって異なりますが、創業融資の場合は、連帯保証が必要となることが比較的多いと考えらます。

代表者の連帯保証が必要?

「地方自治体のあっせん融資制度」の申込みの一般的な流れは以下になります。
① 地方自治体に電話、面談予約
② 地方自治体での面談(1回目)
③ 面談(2回目)
④ あっせん書の交付
⑤ 銀行に申し込み
⑥ 信用保証協会の面談
⑦ 融資決定
⑧ 入金
銀行・信用保証協会・地方自治体の三者が絡むため、面談回数も多く、手続きがやや煩雑になっています。

創業融資制度のメリット・デメリット比較

「日本政策金融公庫の創業融資」と「地方自治体のあっせん融資制度」のそれぞれの創業融資のメリット・デメリットは以下の通りです。

日本政策金融公庫のメリット・デメリット

■メリット
① 原則、面談は1回のみで、融資実行までにかかる時間が短い
② 自己資金要件が「なし」や「融資額の1/10」など、自己資金が少ない方でも利用可能
■デメリット
① 区のあっせん融資と比べて、金利が高いことが多い

地方自治体のあっせん融資のメリット・デメリット

■メリット
① 金利が低い
■デメリット
① 区との面談、保証協会との面談など、面談回数が多いため、融資実行まで時間がかかる
② 自己資金要件が「融資額と同額」とされている場合が多く、一定金額の自己資金の用意が必要
※融資条件等は2018年9月28日時点のものになります。

事業計画書作成のポイント

事業計画書とは?

事業計画書とは、皆さんがこれから行う事業の内容・戦略・収益見込みなどを説明するための書類です。
創業融資の申し込み時には、この事業計画書を使ってご自分の事業の将来性をアピールすることが必要になります。
創業融資における事業計画書には、いくつかの重要なポイントがあります。
代表者の経歴、取引先、必要資金、売上・経費計画などをしっかりと記載して、融資を行っても安心な事業であることをアピールするようにしましょう。
ここからは、記載する内容のなかで、特に重要な部分を個別にご説明していきます。

代表者の経歴

創業融資の審査において最も重要なのが、代表者の経歴です。
まだ事業の実績がない創業時においては、代表者自身がこれからスタートする事業に関連した経験・知識・能力を持っているかどうかが大切になります。
この経歴とは、「日本一の技術がある」とか「〇〇で表彰された経験がある」など特異なものを求められているのではありません。
事業内容が、これまでの職務経歴を活かしたものであるかどうかが大切になります。
ここでは、これまでの仕事で得たご自分の経験や身につけた能力を存分にアピールするようにしてください。

取引が見込める得意先があるとベター!

事業計画書には、開業後に取引が見込まれる得意先を記載するようにしてください。
当然ながら100%取引をしてもらえるという確信はないかもしれませんが、可能性のある得意先を記載するようにしましょう。
見込み客ゼロでこれから営業する人よりも、見込み客がいる状態で開業される人のほうが、金融機関としては安心して融資を行うことができます。

売上計画と経費計画

事業計画書に必ず記載の必要があるのが、売上計画と経費計画です。
その事業で見込まれる売上、それにかかる経費の予測数値を記載します。
あくまでも予測になってしまいますが、何となくの大雑把は数値ではなく、これまでの仕事での経験を活かした一定の根拠のある数値を記載することが大切になります。
この数値は、創業当初は赤字でも問題ありませんが、軌道に乗った後はしっかりと利益が出る計画を作ってください。

設備資金と運転資金

創業融資を申し込む際には、融資希望額の根拠を示すことが必要になります。
「なんとなく1,000万円がほしい!」では、融資を受けることはできません。
まずは、事業をスタートするための必要資金を計算します。
この必要資金は、”設備資金”と”運転資金”に分かれます。
設備資金とは、「機械の購入に800万円」「事務所の初期費用に200万円」といった設備投資のためにかかるお金です。
設備資金は、事前に見積書を出してもらい、金額の根拠を提出する必要があります。
運転資金とは、「家賃に30万円」「給料に70万円」といった、事業をスタートしてからのラボ運営にかかるお金です。
この運転資金はスタート後3ヶ月分の金額が限度になります。
融資を申し込むことができる金額は、必要資金のうち自己資金では足りない部分の金額です。
「設備資金+運転資金で1,100万円が必要。でも自己資金100万円しかない。
そのため1,000万円の融資をお願いします!」
という旨を根拠と合わせて計画書に記載することになります。

設備資金の事後チェック

設備資金として融資を受けた場合には、実際に設備を購入したかどうかのチェックが金融機関から入ることがあります。
購入した設備の領収書などを提示することで、購入したことを証明することになります。
運転資金として融資を受けた場合には、使途は限定されていないためこのようなチェックはありません。

候補物件を決めておくことが必要

創業融資の申し込み時には、事業を行う場所を決めておくようにしましょう。
申込み時には、物件概要を提出することが必要になります。
賃貸の場合、融資が実行される前段階であることから賃貸契約まで行うことはできませんが、賃貸契約予定の物件を決めて、融資が決まり次第、賃貸契約ができるようにしておきましょう。
事業計画書に必要資金を記載する際にも、候補物件を賃貸するために必要な資金を記載することになります。

自己資金のチェック

融資申し込みの際には、自己資金が本当にあるのかどうかを確認されます。
自己資金の証明のために、皆さんはご自分の預金通帳等を提示することになります。
過去数カ月の通帳を確認するため、自己資金を多く見せるために一時的に入金を行ったとしても、イレギュラーなお金の動きはチェックされてしまいます。
金融機関からの信頼を得るためにも、開業のための自己資金は、計画的に貯めておくようにしましょう!

まとめ

金融機関は、「貸したお金が返ってこないかもしれない」というリスクを負って融資を行っています。
少しでも融資の可能性を高めるために、自分に合ったベストな創業融資制度を見極めて、金融機関が融資をしたくなるような事業計画を作成しましょう!

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