個人事業主からの法人成り

個人事業を行っている方で、ある程度売上規模が大きくなると法人成りを検討されると思います。今回は、法人成りについて解説いたします。

法人成りとは

法人成りとは、個人事業主として事業を行っている者が、株式会社等の法人を設立し、事業を引き継いで行っていくことをいいます。

「事業を引き継いで行っていく」という点が法人成りの特徴であり、通常の会社設立と異なります。

法人成りの手続き

新しく会社を設立するという手続きは、通常の会社設立と異なりません。
定款等を作成し、資本金を出資して登記を行えば、法人として成立します。
ただし、法人成りの場合には、個人事業時代に形成した資産や負債()を新会社に引き継ぐという手続きが必要です。

資産とは、個人事業主が所有していた預金の他、売掛金や貸付金などの金銭債権、建物、備品、車両などの固定資産などのことをいい、負債とは、個人事業主が負っていた買掛金や未払金などのことをいいます。

まとめると、
1、会社を設立する
2、個人事業主が所有していた資産・負債を新会社に引き継ぐ
3、新会社は、個人事業主の資産・負債を引き継いだ上で、事業を継続していく
という流れになります。

法人成りの時期

個人事業は、毎年1~12月までの一年間の業績を計算して3月15日までに確定申告をしますが、法人は自由に会社設立日を決めることができるので、たとえば10月に会社を設立したとして、事業年度を丸々一年間取ると決算月は翌年の9月になり、11月末までに決算申告を行います。

20019年10月に会社設立した場合
個人事業主の確定申告
2019年1月~2019年10月(法人の事業開始日まで)⇒2020年3月15日確定申告
法人の決算申告
2019年10月(法人の事業開始日から)~2020年9月⇒2020年11月末決算申告

2020年1月に会社設立した場合
個人事業主の確定申告
2019年1月~2019年12月⇒2020年3月15日に確定申告
法人の決算申告
2020年1月~2020年12月⇒2021年2月末に決算申告

消費税課税事業者の場合

個人事業主の方が法人成りをする時期としては、上記の通りが一般的ですが、消費税の免税事業者が課税業者になる時期に法人成りをする場合には注意が必要です。

課税事業者の判定

新設法人の場合、資本金1000万円未満で会社設立をすれば、原則として最初の二年間は消費税免税になります(特定期間の判定は必要)。

個人事業主として2年前(2018年)の売上が年間で1000万円を超えると、3年目(2020年1月1日)からは課税事業者(消費税を納める必要がある者)となります。

1月1日に会社設立できるのか

会社設立日が1月1日にできれば、そのまま個人事業から間を空けずに新設法人に引き継ぐことができますが、法務局は12月29日~1月3日まで休みですので、1月の会社設立日は最短で1月4日になります。
そのため、1月1日~1月3日は個人事業主としてみられてしまい、個人として消費税の課税事業者です。

個人事業から法人に移行する際は、個人の資産を法人に売却する手続きが必要ですので、その3日間だけでも課税事業者だと、売却した資産に係る消費税を納めなければなりません。

対策として

1、2019年12月中に法人を設立(法人としての器を作成)
2、2019年12月中に個人事業主から法人へ資産を譲渡(12月31日)
3、2020年1月1日から法人として事業を開始
という方法があります。

「法人を設立した日=事業を開始した日」とは限らないので、法人成りの場合には事業を譲渡する日を決めれば問題ありません。
12月31日までは個人事業主として営業し、同日に法人へ事業譲渡を行い、翌年1月1日から法人事業を開始すれば、個人として課税事業者になる前に法人へ移行することができます。

まとめ

個人事業主が消費税の免税事業者から課税事業者に切り替わる時期に法人成りを検討する際には注意が必要です。
今回はあくまでも一例ですが、消費税の取り決めは複雑ですので、詳しくは直接ご相談ください。

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