中小企業における法人税等及び消費税の申告期限の延長

Ⅰ 法人税等及び消費税の申告期限

本来は、法人税等及び消費税の申告期限は、当該事業年度終了の日の翌日から2ケ月以内(※1)とされています。

例) 4月1日~3月31日を事業年度とする法人の場合 ⇒ 5月31日が期限となります。

※1 申告期限・納期限が、土曜日、日曜日、祝日等の場合は、その翌日が期限となります。

 

Ⅱ 法人税等の申告期限の延長の特例

  • 上記Ⅰのとおり、本来の申告期限は事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内となって

いますが、事前に申請手続きを行うことにより、中小企業の場合は申告期限を1ヶ月延長することが可能になります。

上記Ⅰの例の場合には6月30日を申告期限することができます。

  • 申告期限延長の要件

申告期限の延長の特例の要件としては、以下の2つのパターンがあります。

  • 災害などのやむを得ない事情により決算が確定しないため、確定申告書を提出期限までに

提出できない場合

  • 定款等の定めにより、又は特別の事情があることにより、今後、各事業年度の日の翌日から

2ケ月以内にその事業年度の定時株主総会が招集されないため、確定申告書を提出期限

までに提出できない場合

※法人税の申告書は、定時株主総会の承認により決算が確定後に提出することになるため、

会社の定款に「定時株主総会は、毎事業年度の終了後3カ月以内に召集する

との規定の記載があれば、2の要件を満たすことになります。」

 

Ⅲ 税務署への申請

  •  【申告期限の延長申請書】 ★災害その他やむを得ない理由による場合

確定申告書の延長を申請しようとする事業年度終了の日の翌日から45日以内に納税地の

税務署長宛に提出する必要があります。

  •  【定款の定め等による申告期限の延長の申請書】 ★定款の定め等による理由の場合

申告期限の延長の特例の適用を受けたい場合には、最初にその特例の適用を受けようとする

事業年度終了の日までに所定の申請書を所轄の税務署長宛に提出する必要があります。

 

Ⅳ 都道府県への申請

税務署への申請が終わった後に、納税地の都道府県税事務所へ

【申告書の提出期限の延長の処分等の届出書・承認等の申請書】の提出が必要になります。

提出期限

都道府県民税 ⇒ 事業年度終了の日から22日以内

法人事業税   ⇒ 事業年度終了の日

上記のとおり提出期限に若干の差異がありますが、通常はどちらも1枚の申請書により

事業年度の終了の日までに提出することになります。

 

Ⅴ 申告期限は延長されても税金の納付期限は延長されない ★要注意!!

この延長の特例は、あくまでも確定申告書の提出期限の延長であり、

税金の納期限は延長の適用は無く、通常通り、当該事業年度終了の日の翌日から2ケ月以内

となります。

よって、申告期限の延長の適用はあっても、納税が2ケ月経過後になると利子税が発生してしまいます。

この利子税は、延滞税や加算税等の罰金ではなく、利子のようなものであるため、損金(経費)算入することは可能ではありますが、やはり余計な納税は回避したいものです

そこで、通常は利子税の発生を回避するために、確定申告書を2ケ月経過後に提出する場合であっても、2ヶ月以内に見込納付として概算税額(少し多め)を納税しておくことになります。

見込税額>確定税額としておけば、利子税は回避できます。

 

Ⅵ 消費税の申告期限の延長

令和2年度税制改正により、消費税についても申告期限を延長できる制度が創設され、法人税の申告期限の延長の特例を受けている法人が、消費税申告期限延長届出書を提出した場合には、消費税の確定申告書の提出期限も1ヶ月延長されるとになりました。

上記届出書の提出期限は、特例の適用を受けようとする事業年度終了の日の属する課税期間の末日までとなります。

納税ついては、法人税等と同様に延長されませんのでこちらも注意が必要です。

 

Ⅶ 念のため延長の申請をしておくという選択

申告期限の延長の特例制度は、所定の申請書を税務署へ提出するだけで適用できる制度になります。

長い会社経営においては、思いもよらない事情により、急に、申告期限までに申告できなくなるという事態は十分に起こりうるものです。

この思いもよらない事態に備えるために、念のために延長申請をしておくという選択肢もありなのではないでしょうか