【税込経理会計】と【税抜処理会計】の選択

消費税を納付する必要がある会社(以下、消費税の課税事業者という)については、消費税の会計処理方法について、【税込経理方式】と【税抜経理方式】の二つの処理方法が認められています。
どちらの処理方法を選択しても、決算申告における消費税の納税額は同額となりますが、仕訳の方法・決算書等の表示方法・金額の判定等に相違があります。
下記において、その相違点等を解説いたします。

【税込経理】と【税抜経理】の仕訳比較

税込経理とは

消費税の課税取引仕訳において、本体価額と消費税額を区分することなく仕訳計上する方法になります。

税抜経理とは

消費税の課税取引仕訳において、本体価額と消費税額を区分して仕訳計上する方法になります。

仕訳例

例)A 商品を5,500円(うち消費税500円)で仕入れ、現金にて支払った

B Aの商品を8,800円(うち消費税800円)を販売し、現金にて受け取った

C AB取引の後に決算を迎えた(年間取引は上記のみ)

 

■税込経理仕訳

A ⇒ 仕入 5,500円 / 現金 5,500円

B ⇒ 現金 8,800円 / 売上 8,800円

C ⇒ 租税公課 300円 / 未払消費税 300円 ※800円-500円=300円

利益の計算 8,800円(売上)-5,500円(仕入)-300円(租税公課)=3,000円(利益)

 

■税抜経理仕訳

A ⇒ 仕入 5,000円         / 現金 5,500円

仮払消費税 500円 /

B ⇒ 現金 8,800円 / 売上 8,000円

/ 仮受消費税 800円

C ⇒ 仮受消費税 800円 / 仮払消費税 500円

/ 未払消費税 300円

利益の計算 8,000円(売上)-5,000円(仕入)=3,000円(利益)

上記のとおり、
【税込経理】は、消費税額を「売上」・「仕入」に含めて計上し、決算時に消費税の納税額を「租税公課」にて経費計上する一方、
【税抜経理】は、消費税額を「売上」・「仕入」に含めず、別途、「仮払消費税」・「仮受消費税」に計上し、決算時に、「仮払消費税」と「仮受消費税」の相殺差額として消費税の納税額を算出計上します。

※結果的には、決算申告において納税する消費税額は、どちらも300円となり一致することになります。

 

【税込経理】と【税抜経理】の決算書比較

税込経理

売上高   8,800円

仕入高   5,500円

売上総利益 3,300円(粗利率37.5%)

販管費      300円

営業利益  3,000円

税抜経理

売上高   8,000円

仕入高   5,000円

売上総利益 3,000円(粗利率37.5%)

販管費       0円

営業利益  3,000円

結果、個別の数値に違いはありますが、営業利益は、①と②のどちらも、3,000円で一致することになります。

 

固定資産取得(減価償却)に与える影響

法人税法においては、固定資産の取得については、下記のとおり【購入金額】によって経理の方法が変わってきます。

① 10万円未満

消耗品費として、購入時に全額費用計上可

② 10万円以上20万円未満

固定資産(一括償却資産)として資産計上後に3年間にわたり費用計上(減価償却費)計上可

③ 10万円以上30万円未満

固定資産として資産計上後に、購入時に全額費用(減価償却費)計上可

④ 30万円以上

固定資産として計上後に、法定耐用年数により費用(減価償却費)計上

※②については、②と③の選択適用となります。
※③については、青色申告の中小企業者に限定されます。

上記の金額の判定は、
【税込経理】の場合は税込金額にて
【税抜経理】の場合は税抜金額にて
判定することになるため、経理方法により決算数値に影響を及ぼすこととなります。

結果、取得時の金額の判定時において、早期費用計上の観点からは、【税抜経理】が有利であると考えられます。

 

交際費課税に与える影響

法人の交際費については、資本金等の額により下記のとおり損益経理について、制限されています。

① 資本金額が100億円超の法人

交際費は全額損金経理不可

② 資本金額が1億円超100億円以下の法人

原則:交際費は全額損金経理不可
ただし、「社外飲食費」の50%までは損金経理可

③ 資本金額が1億円以下の法人

800万円までの交際費又は「社外飲食費」の50%まで損金経理可

結果、上記800万円の判定は、
【税込経理】の場合は税込金額にて
【税抜経理】の場合は税抜金額にて
判定することになるため、年間の交際費が800万円を超えるような場合には、【税抜経理】の方が、損金経理できる金額が多額となります。

 

上記以外にも、いくつかの相違点等がありますが、自社にあった方法を採用するのが良いかと思いますので、法人設立時・課税事業者となった場合・経理方法の変更を考えている場合等は、是非、専門家に相談した上で、消費税の経理方法を選択されることをお勧めいたします。