不法行為による損害と賠償請求権

金銭を扱う仕事の周辺には詐欺・横領などの不正行為のニュースが絶えることがありません。
私法上では不正行為を受けた場合には、その損害と同時に損害賠償請求権を取得するものと解されています。
これを法人税務ではどのように取扱うのかという議論は従来より絶えませんが、財産の損害(損金)と損害賠償請求権(益金)を「ひもつき」と見るか「切り離して」見るかによる「同時両建説」と「異時両建説」の立場があります。

 同時両建説

これは昭和43年最高裁判決において、社長の横領行為による損失とこれに対する損害賠償請求権の計上時期の判断について示された考え方です。
仕訳で示すと、
     雑損失(横領損失)×× / 現金(仮払金)××
    未収金(未収賠償金)×× / 雑収入(損害賠償請求権)××
となり、損失発生年度に同額の損金・益金を認識します。結果的にはこの事業年度で損益は計上されません。この「同時両建説」は、損害と賠償請求権が同時発生するという私法の発想にも合致します(未収賠償金が回収不能ならば、後に貸倒損失を認識)。

 異時両建説

その後、昭和55年に税法上実務から発達したものとして法人税基本通達2-1-43が登場します。
これは「他の者から支払いを受ける損害賠償金」は「支払いを受けるべきことが確定した日(または実際の支払日)」の属する事業年度に益金算入するという取扱いです。
この考え方を用いれば、「横領損失」が損失発生年度に先行して計上され、「賠償金」は後の「確定した日」に計上されます。これを「異時両建説」といいます。
ただし、この通達は加害者を「他の者」(第三者)とする不法行為をカバーするものであり、「他の者」でない役員や従業員については個々の事情で判断されると解されます。

 横領された本人は「発生」など分からない!

そもそも横領などの不正行為があったとしても、その時点では把握することは困難であり、後日発覚するというケースが多いはずです。経理部長の横領行為が税務調査で発覚した某事件では、損害賠償金の計上時期を「賠償請求権の行使が事実上可能となった時(法人がその損害の発生と加害者を知った時)」とする判決が出されています。

 横領等を防ぐには

横領は加害者単独での偽造行為や取引先との共謀、管理者権限の悪用に対する監督不足等がその要因といえます。
不正防止の対策については
①現金・預金の出し入れをする担当者と、会計処理の担当者は別々の者にする
②ダブルチェック体制の確立
③預金や売掛金・買掛金の最終残高は役員が直接確認をする
等常日頃から講じることが必要です。

 まとめ

中小企業において、詐欺・横領の被害に遭ってしまう機会はあまり多くないかもしれませんが、万が一に備えて適切な会計処理を行うようにしましょう。
また、損失計上時期について恣意的な処理が行われれば、税務署から否認されるリスクもありますので、お気を付けください。

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